撮影/滝浦 哲
瑞穂の舎
新築/東京都瑞穂町
私が生まれた昭和51年、東京郊外に建つ旧宅には4世代10人が賑やかに暮らしていました。それから数十年。家族が巣立っていくにつれて、親戚や友人の集まる機会は自然と少なくなり、家の老朽化も急速に進んでしまいました。「これからも愛着を持って住み継いでいける家をつくろう。」そうしてこの建替計画が始まりました。
依頼先探しも気が付けば2年になる頃。その日出会ったのは、新築なのに街並みに馴染んだ、控えめで優しい佇まいの建物でした。無垢の床と漆喰の壁の質感。品が良いのに気取っていない、親しみやすい雰囲気。それまでのモヤモヤが一気に吹き飛んでしまうような、気持ちよさと説得力を持った空間でした。
トトモニは、風通しの良い自由な設計事務所でした。そして職人気質なこだわりを持った頼れる存在でもありました。打ち合わせを重ねるごとに、設計・施工・施主の対等な信頼関係も生まれて、手前味噌ですけれど、素晴らしい家になったと思います。
暮らしと調和した飽きのこない設計。母の故郷の木材。しっかりとした構造の家に住む満足感。明かりが左官の壁をまわってできる陰影。アイアン製ポストの風合い。夏椿。木々に囲まれた玄関への小道。全てに作り上げた人たちとの思い出やエピソードがあります。
親世帯の大テーブルと薪ストーブを中心に人が集まると、まるで囲炉裏を囲んで団欒しているような、どこか日本的な懐かしさも感じます。暖かい季節には、妻と1歳になった息子と一緒に芝生の上で遊んだり、鳥の声や葉擦れの音を聴きながら花や緑を楽しんでいます。
以前この敷地には、亡き祖父が植えた大きな欅がありました。いつか活かせたらと、数年前に父が伐り製材しておいたその木は、トトモニの手で趣ある表情の柱と框に姿を変え、今も家族を見守ってくれています。いつか息子が大きくなった時、この柱から何かを感じ取ってくれるかなぁ、なんて想像する楽しみもできました。
最後に、見学させていただいた施主様、我が家に携わってくれたたくさんの方々、本当にありがとうございました。トトモニの皆さん、末永くよろしく。これからもいい家つくってくださいね!
(住まい手)
DISCRIPTION
建築地
東京都瑞穂町
概要
仕様
職方